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骨粗鬆症

どんな病気

腰椎断面

骨粗鬆症とは、骨の化学的組成に異常はないが、単位容積当たりの骨質量が減少した状態をいいます。簡単にいえば、体を構成する骨が、粗く、もろくなって、ちょうど大根に"ス"が入ったように骨の量が少なくなってしまうことをいいますが、決して1つの病気をいうものではなく、栄養、内分泌、遺伝など、いろいろな原因により、骨からカルシウムが少なくなり、骨がもろくなってしまうすべての疾患を総称したものであります。原因は諸説がありますが、骨の生理的な老化に種々の因子が加わって発症するといわれています。
すなわち、体を構成する骨は体をささえる役目の他に、常に骨の内部では新しい骨が形成されて、古い骨が吸収されるということをくり返して、一定の骨の量を保つ、骨代謝というバランスを保っています。加齢による骨の形成と吸収のバランスのくずれや、カルシウムの摂取不足、カルシウムを調節するホルモン異常、運動不足、日光不足などの原因が複雑に関与して発症するといわれています。これらの原因により、骨粗鬆症は、老人性、閉経後骨粗鬆症、内分泌性(末端肥大症、甲状腺機能亢進症など)骨粗鬆症、先天性(骨形成不全症)骨粗鬆症などに分類されます。

骨粗鬆症は、それ自体直接死につながるような疾患ではありませんが、骨粗鬆症になった人の骨折は治りにくく、また、お年寄りが寝たきりになると筋肉のおとろえや老人性痴呆、いろいろな内科的病気を起こしやすくなり、その予後が悪いことが知られており、近年の高齢化社会にともない骨粗鬆症が非常に大きな問題となってきています。

どんな症状

骨折の多い部位

ごく初期のうちは、特に痛み等もなく、外観上やレントゲン写真にも明らかな変化は見られませんが、人によっては背中から腰にかけての「はる感じ」「重苦しい」「疲れやすい」と訴えることがあります。これは骨の減少が背骨におきやすく、弱くなった背骨の負担を筋肉で補うため、異常な緊張が加わり、筋肉の疲労が生じるからです。
進行すると外観上でも背中や腰が曲がっていわゆる円背を呈して、身長も低くなります。このような人では、X線でもはっきりした骨の粗鬆化や背骨の椎体の変形や圧迫骨折等もよく見られます。まとめると、腰背部痛、脊椎後弯(背中がまるくなる)、椎体の粗鬆化と変形が生じてきます。
骨粗鬆症は軽微な外傷で骨折を起こしやすいので、今まで症状が全くなかった人でも、骨折することによって受診し、骨粗鬆症と診断されることも少なくありません。
たとえば、軽く尻餅をついた際に胸や腰の椎体の圧迫骨折が生じたり、軽く転倒した程度でも、手関節の橈骨遠位部骨折や、肩関節の上腕骨近位部骨折がよく認められます。また、高齢者等で最も問題となる股関節の大腿骨頚部骨折などを起こします。高齢者の骨折は、長期間の安静や固定などにより、いろいろな合併症がおこり、重症化することが少なくないので、注意を必要とします。
また、高齢者の場合、骨折していても比較的痛みが軽い場合もあり、家族の方が打撲だろうと判断されて、発見と治療が遅れることも少なくありません。

どんな診断・検査

骨単位

背中や腰が曲がっている70歳以上の老人の方は、ほぼ骨粗鬆症であると思われますが、確定診断はX線による骨密度の減少や、椎体の変形等を認めることで、ほぼ診断されます。補助診断としては、血液検査によるカルシウム、リンなどの測定や、尿検査などを行いますが、老人性、閉経後骨粗鬆症の人は、血液、尿検査も正常の場合が多く、むしろ、他の内分泌異常等にともなった、二次的な骨粗鬆症を調べるための鑑別に行われます。また最近は、骨密度の測定が一般的となり、診断や治療経過をみるのに有用ですが、骨密度の測定値のみで判断するのは危険もあります。骨密度の測定部位としては、手の中手骨、前腕の橈骨、足の踵骨、腰の腰椎などが一般的ですが、測定部位により、結果が異なっていることも多く、また、医療機関による測定誤差もかなり認められるからです。

また最も問題となるのは50歳前後の閉経後骨粗鬆症のはじまりの人では、骨密度は若い時のカルシウムの貯金のおかげで正常値となることが多いのですが、骨代謝においては、女性ホルモンの低下にともない、骨が作られる骨形成と骨が消失していく骨吸収のバランスがくずれ、骨粗鬆症が進行しているからです。骨密度の測定値が正常でも、治療を要する場合もあるからです。

どんな治療法

痛みなどの症状のない人の場合、骨量の減少を改善し、骨折を予防することが治療の原則ですが、痛みがある人には、第一に患者さんの苦痛である「痛み」をとることが基本となります。急性期と慢性期、および骨折の有無により治療法が異なりますが、急性期の痛みの場合、まず安静、湿布、消炎鎮静剤の内服、坐薬等が使用されます。骨折をともなう場合には、骨折の治療が最優先であり、保存的治療で治療可能な場合にはギプス固定、コルセット装着などであり、また大腿骨頚部骨折等に対しては早期離床目的のため、骨接合術(ヒップスクリュー等)や人工骨頭置換術等が行われます。
慢性期の場合、症状としてはあまり激しい痛みはないので湿布や軟膏等の外用薬が中心となります。また、理学療法としては血流を良くして、筋肉の緊張を和らげる温熱療法(ホットパック、マイクロ波等)や、低周波治療を行います。体動痛が強い場合は、コルセット装着し、痛みが軽度の場合にはストレッチや筋力強化の体操を指導します。内服薬としては、活性型ビタミンD剤(腸管からのカルシウム吸収を促進)、ビタミンK剤(骨形成を促進)、カルシウム剤、女性ホルモン剤(骨吸収を抑制)等が主に使用されます。注射薬としてはカルシトニン剤(骨吸収を抑制)等があります。
よく自己判断でカルシウム剤を大量に内服している方がいますが、カルシウムは食事から摂取するのが原則であり、どうしても好き嫌いなどにより、摂取不足の場合には、補助としてカルシウム剤を投与しますが、大量のカルシウム剤を内服することは、血液中のカルシウム値のみ上昇して、高カルシウム血症を起こして、不整脈を誘発したり(特に強心配糖体ジキタリス内服の人は注意)、胃腸症状等の副作用も起こしやすいので注意を要します。

どんな予防法

骨粗鬆症の予防の基本は、20〜30歳頃にピークに達する最大骨量を増やし、年齢とともに減少する骨量をいかに維持することであり、そのために若い頃からの食事や運動等の生活習慣が大切と思われます。
食事はバランスよく、カルシウム、たんぱく質、ビタミンDの多い食物を摂取し、特にカルシウムは日本人の場合は摂取不足気味であるので、最低1日約600mg以上摂ることが望ましい。また適度な運動をすることは運動による電気的な刺激が骨の骨芽細胞を活性化し、骨量を増加させ、筋力の増強にともなう転倒の予防にも効果的である。日光浴もとても大切であり、皮膚が太陽の紫外線にあたることによりビタミンDが産生され、腸管からのカルシウムの吸収が促進するからです。
一般的に骨粗鬆症の危険因子としては、

  1. やせた女性で、閉経後の人
  2. カルシウム摂取不足の人(牛乳等の乳製品が嫌いな人)
  3. 運動不足の人
  4. 日光にあまりあたらない人
  5. 消化器系の手術をした人(胃、腸など部分的切除した人)
  6. 婦人科的な病気で卵巣を摘出した人
  7. 慢性の下痢、アルコールを大量に飲む人

などがあげられます。これらを予防することは骨粗鬆症の改善にもつながります。また、骨粗鬆症は、動脈硬化の危険因子とも考えられ、その予防は心筋梗塞などの予防にもつながります。

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