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膠原病

膠原病は関節の痛みや発熱、湿疹、筋肉の痛み、倦怠感、腹痛、下血など全身にさまざまな症状があらわれる病気で、女性に圧倒的に多いのが特徴です。膠原病というのは、実際にはある種の病気の総称で、さまざまな病気が含まれています。

どんな病気

膠原病は関節の痛みや発熱、湿疹、筋肉の痛み、倦怠感、腹痛、下血など全身にさまざまな症状があらわれる病気で、女性に圧倒的に多いのが特徴です。
膠原病というのは、実際にはある種の病気の総称で、さまざまな病気が含まれています。
体には、臓器と臓器、あるいは臓器と組織などをつなぐ組織があり、これを結合組織と呼んでいます。1942年、ドイツの病理学者クレンペラーは、それまで全く無関係な病気と考えられていた全身性エリテマトーデスや強皮症、皮膚筋炎などと慢性関節リウマチに共通して結合組織と血管の異常があることに気付きました。
こうして1.全身に分布する血管や結合組織がおかされ、2.自分を攻撃する抗体(自己抗体)が作られ、3.関節にリウマチのような症状が現れる病気を膠原病と総称するようになったのです。簡単にいえば、膠原病は自分を攻撃する抗体ができて、関節をはじめ全身の結合組織に炎症が起こる病気といえます。

では、膠原病にはどのような病気があるのでしょうか。最も多いのは、慢性関節リウマチです。これに全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎・多発性筋炎、結節性多発動脈炎、リウマチ熱を加えて、膠原病の6大疾患と呼ばれれています。最近はシェーグレン症候群や混合性結合組織病(MCTD)など、いろいろな病気が膠原病の仲間と考えられるようになっています。

どんな症状

膠原病の中で代表的な病気について、その症状を説明致します。

1)慢性関節リウマチ  
どの年齢でも発病しますが、特に40代から50代に一番多く、また女性は男性の3~4倍発生頻度が高いです。初発症状としては、手足の朝のこわばりと関節痛が多いのですが、関節痛は運動時に最も強く感じます。その関節を押さえると多くは圧痛を認めます。最初は痛む部位があちこちに移動しますが、次第に一定の部位に落ち着いてきます。そしてこの頃になると痛む関節に腫れも認めるようになります。関節リウマチの関節の腫れは特有でいわゆる紡錘状(糸巻き状)を呈します。このような関節腫脹が左右対称性に数多く現れるのが特徴で、特に手関節や指の関節がおかされやすいようです。さらに関節によって液の貯留を証明することもあります。また患者さんによっては肺などに炎症をきたす例もあります。

2)全身性エリテマトーデス  
20代から40代に発症することが多く、発熱や倦怠感、食欲不振など全身症状のほか皮膚や関節の症状、腎臓、肺、心臓、脳の中枢神経などの症状が現れます。中でも特徴的なのは、顔に現れる紅斑で、ちょうど蝶のような形に紅くなるので、バタフライラッシュとも呼ばれています。さらに寒い季節に指先が真っ白になったあと紫色になる「レイノー現象」も初期に多い症状です。このほか、腎炎によるむくみ、心臓の周囲に水がたまる心外膜炎、腹痛や吐き気、胸に水のたまる胸膜炎や呼吸困難を伴う間質性肺炎、さらに脳の中枢神経がおかされた場合には、けいれん発作や精神症状によって妙なことを口走ることもあります。つまり症状は極めて多様で、患者さんによって症状の現われ方も異なります。

3)強皮症  
皮膚が固く厚くなるのが大きな特徴です。硬化は皮膚に限らず全身の臓器に及ぶため、全身性硬化症と呼ばれることもあります。その結果、顔の皮膚の硬化が進むと顔が突っ張って無表情になり、指の皮膚の硬化が強いと曲がったまま拘縮してしまったりします。レイノー現象にみられるように、末端での血行が悪いために、指先などの骨が吸収されてしまうこともあります。

4)皮膚筋炎  
肩や骨盤周囲の筋肉の力が低下し、「階段を上がれなくなった」とか「髪をとかす手が疲れて、すぐに下に下ろしたくなる」などと訴える人を多く認めます。ノドの筋力が低下すると、ものを飲み込む時につかえるようになります。皮膚症状としては両方の上まぶたにむくみを伴う赤紫色の発疹ができるのが特徴です(この皮膚症状を伴わないものが多発性筋炎といいます)。

5)結節性多発動脈炎  
唯一男性に多い膠原病で、血管の壁に炎症が起こります。炎症の起こる部位によって、たとえば腸壁に穴があいたり、あるいはその臓器の働きが低下するなどいろいろな症状が現れます。

6)リウマチ熱  
溶血レンサ球菌の感染後に起こることがわかりました。溶血レンサ球菌に感染すると、体内でこれを攻撃する抗体が作られます。この抗体が、心筋を攻撃して心筋障害や弁膜症を起こします。関節や皮膚の結合組織もおかされ、関節痛や発熱、腹痛、紅いリング状の発疹などが生じます。現在では、溶血レンサ球菌の感染がわかると抗生物質が使われます。それによって日本のような先進国ではリウマチ熱はほとんど見られなくなりました。

7)シェーグレン症候群  
唾液や涙などの分泌が減って、目や口などが異常に乾燥する病気で、関節が痛んだりすることもあります。また関節リウマチなどの他の膠原病と合併することも多いのが特徴です。

8)混合性結合組織病  
全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎が混じって現れる病気で、血液中に自己抗体の一種の抗RNP抗体の高いことを特徴とします。また寒い時などに手が白くなるレイノー現象や手の腫れぼったさなどの症状も多く見られます。

どんな診断・検査

先程も述べましたように、膠原病は一つの疾患ではなく、いろいろな病気が含まれているため、それぞれの疾患について検査法なども異なってきますので、一般的なものを述べます。膠原病の検査には病名診断のための検査と病気の広がりを把握するための検査、さらに病気の活動性を知るための検査などがあります。血液検査では血沈値、自己抗体(リウマチ因子、抗核抗体、RNP抗体、DNA抗体などで自分の組織や細胞核に対しての抗体で、膠原病に特徴的)CPK値、血算、血清補体価、CRP値などがその項目に含まれ、尿蛋白、沈渣は腎臓などの障害をチェックするために行います。また関節液の性状を調べたり、胸部や各骨関節のレントゲン検査も施行します。さらに病気の広がりをチェックするためには、超音波(エコー)やMRI検査、腎、筋生検なども行います。
基本的にはそれぞれの病気で特徴的な自己抗体が存在しますが実際には必ずしも抗体が発見されない場合もありますので、抗体が陰性だからといって膠原病ではないと診断することもできません。

どんな治療法

膠原病の個々の病気で治療法は異なりますが、慢性関節リウマチと他の代表的膠原病である全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発動脈炎について、一般的なものを述べます。
慢性関節リウマチでは日常生活の管理、薬物療法、理学療法、手術療法からなっています。薬物療法としては、炎症や関節の痛みを抑える非ステロイド性抗炎症剤、リウマチの進行を抑える抗リウマチ薬があります。抗リウマチ薬は基本的にはリウマチの根底にある免疫異常を是正するもので、リマチル、アザルフィジン、金製剤などが存在します。また抗がん剤として開発されたメソトレキセートは我が国でも2年前に厚生省により認可されましたが、米国ではファーストラインの薬としてよく使われ、効果をあげています。ステロイドは抗炎症、抗免疫の両面の作用を持っており、特にプレドニゾロンとして少量(5mg以下)でよく使われます。最近、TNF-αというサイトカインを抑える生物製剤(抗体など)が米国では認可され、治療効果をあげています。その他の膠原病でも関節リウマチ同様に専門医による慎重なコントロールが必要になります。膠原病は、自己免疫を基に全身に炎症が起こる病気ですから、治療は炎症を抑え、免疫を調節したり、抑制することが目標になります。基本的には、大量のステロイド剤、それでも効果がなければ免疫抑制剤などが併用されます。ステロイド剤は、強力に炎症を抑えると同時に免疫の働きを抑える作用があります。こうした薬を使うことで、急性期の炎症はかなり抑えることができます。
しかし関節のみに炎症が出る慢性関節リウマチと違って、他の膠原病は全身に炎症が起こります。したがってステロイドの量も格段に多くなります。命に関わるような全身臓器が障害されているような場合、3日間、1日1gのメチルプレドニゾロンなどのステロイド剤を点滴で投与し、その後60~80mgのステロイド剤の飲み薬を服用します。これがステロイド剤のパルス療法です。
膠原病は、適切な治療を行ってこそコントロール可能となるので、勝手に薬の量を減らしたりしないで、専門医の指導にしたがって治療をうけることが重要です。

どんな予防法

現在のところ、発生原因は明らかでありませんが、いくつかの疾患遺伝子と環境因子とが相互作用を起こして発生するものと考えられています。したがって、これという予防法というものは存在致しません。しかし精神的、肉体的ストレスが引き金になって発生したり、病気が増悪したりすることが多いので、十分な休養やリラックスも重要と思われます。


おもな治療薬

非ステロイド性抗炎症剤としては、インドメサシン、ボルタレン、ロキソニン、アスピリンなどたくさん存在します。ステロイド剤としてはプレドニン、プレドニゾロン、デキサメサゾン、メチルプレドニゾロンなどがあります。抗リウマチ薬としては、リマチル、アザルフイジン、アクタリット、金剤(注射薬シオゾール、内服薬リドーラ)などがあります。免疫抑制剤としては、メソトレキセート(リウマトレックス)、イムラン、エンドキサン、ブレジニン等があります。

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